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目の前をカメが歩いていた。すぐに立ち止まり、花の匂いを嗅ぎ、鳥のさえずりに耳を傾けていた。のん気なものだと思う反面、うらやましいとも思った。そしてまた「なぜ、自分は走るのか」という疑問にぶつかった。 「こ、こんにちは」 僕は勇気を出して声をかけた。突然話し掛けられ、カメは驚いていた。驚くのも無理はない。皆走ることに夢中で、他人に話しかけたりしないから。 「やあ、今日もいい天気だね」 僕は空を見上げた。雲ひとつない。快晴だった。 「ああ、そうだね。気づかなかったよ」 カメは笑みを浮かべていた。久々に自分に向けられた笑顔を見た。 「君は、どうして走らないんだい?」 「それじゃあ、どうして君は走るんだい?」 カメは笑みを崩さない。 僕はどうして走るのか? 「みんなが追いかけてくるからだよ、たぶん」 「それで、どこまで走ればいいんだい? あの山までかい?」 僕はどこを目指して走っているんだろう。 「あの山まで走ると次はその先の湖まで走るんだ。その次は丘、川。ゴールだと思っていたところに辿りついても、足音がするとまた走り出してしまう」 そうして、僕は走る意味も理由も失ったのだろう。 「君は不安にならないの? みんなが君を追い抜いて走り去っていく。取り残されることを怖いと思わないの?」 正直、僕は怖い。 カメは僕の質問には答えなかった。 「君、この花の香りを知っている? いい匂いがするんだよ」 僕は首を横に振った。 「じゃあ、あの青い鳥の歌声を聴いたことは?」 僕はまた首を横に振った。 「そういうことさ」 カメは懐こく笑った。僕は意味がわからず、首を傾げた。 「はっきり言って怖いよ、取り残されることは。君は僕よりも長い距離を走ってきたはずだ。僕はせいぜい、この近所を知っているだけ。でも、君はこの花の匂いもあの鳥の歌声も知らない。僕はただ楽しんでいたいだけなんだ」 「そういうの、なんだかすばらしいね」 僕は少し悲しくなった。 「生きてるって気がするよ」 そう言って、カメは飛び立つ青い鳥に手を振った。 僕はどうして走るのだろう。どうして走り出してしまったのだろう。 「そろそろ行かなくていいのかい?」 足音が迫っていた。 別れを告げ、僕はまた走り出した。けれど、五メートルも進まないうちに、僕の足は止まってしまった。 振り向くと、カメは不思議そうに僕を見ていた。 「もういいんだ。いいんだよ」 僕はカメに微笑んだ。 「この辺を案内してくれないかな? 花のこととか鳥のこととか、他にもいろいろ教えてよ」 カメは顔をしわくちゃにして笑った。 「じゃあ、一緒に月を見よう? 今夜は満月だ。なんでも君のご先祖さまはあそこにいたらしい」 「ご先祖さまもずっと走っていたのかな?」 「ずっと餅をついていたんだって」 カメは真顔でそう言った。僕は堪えきれずに吹き出した。生まれて初めて、声をあげて笑った。 「なんだかすっきりした」とつぶやくと、カメは相変わらず笑いながら言った。「それはね、たぶん、君がヒトになったからだよ」 あとがき いちおう、これが生まれて初めて書いた小説ってことになっている。正確には生まれて初めて書いた小説をもとに書き直したものかな。最初の小説は、ノートに手書きしたものだったのでもう残っていない。だから、ストーリーや台詞を思い出して書き直したものだ。おそらく本当に最初に書いた小説よりは多少こなれているはず。 内容は子供向けのようでいて、たぶん大人向け。 誰か絵の描ける人、この話を絵本にしてくれませんか? と思っていたりしないでもない(´・д・`) そういえば、報告が遅れたけれど、ランキングについて。結局、ブログ村一本に絞ることにしました。ささやかな仕掛けを施したので、なにかしら感じるところのあった記事がもしあれば、「ブログ村に㊞投票!」という画像をクリックしていただけるとうれしいです。 うーん、ここ最近、文章がうまく書けない・・・。たぶん、いろんな意味で刺激が不足してるんだ(´・д・`) |
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