詠みびとしらず
小説のようなものや短歌のようなもの、書道のようなものなどが書き散らしてあるブログです。

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2008年08月28日
  
2008年02月08日
 目の前をカメが歩いていた。すぐに立ち止まり、花の匂いを嗅ぎ、鳥のさえずりに耳を傾けていた。のん気なものだと思う反面、うらやましいとも思った。そしてまた「なぜ、自分は走るのか」という疑問にぶつかった。

「こ、こんにちは」
 僕は勇気を出して声をかけた。突然話し掛けられ、カメは驚いていた。驚くのも無理はない。皆走ることに夢中で、他人に話しかけたりしないから。
「やあ、今日もいい天気だね」
 僕は空を見上げた。雲ひとつない。快晴だった。
「ああ、そうだね。気づかなかったよ」
 カメは笑みを浮かべていた。久々に自分に向けられた笑顔を見た。
「君は、どうして走らないんだい?」
「それじゃあ、どうして君は走るんだい?」
 カメは笑みを崩さない。
 僕はどうして走るのか?
「みんなが追いかけてくるからだよ、たぶん」
「それで、どこまで走ればいいんだい? あの山までかい?」

 僕はどこを目指して走っているんだろう。

「あの山まで走ると次はその先の湖まで走るんだ。その次は丘、川。ゴールだと思っていたところに辿りついても、足音がするとまた走り出してしまう」
 そうして、僕は走る意味も理由も失ったのだろう。
「君は不安にならないの? みんなが君を追い抜いて走り去っていく。取り残されることを怖いと思わないの?」
 正直、僕は怖い。
 カメは僕の質問には答えなかった。
「君、この花の香りを知っている? いい匂いがするんだよ」
 僕は首を横に振った。
「じゃあ、あの青い鳥の歌声を聴いたことは?」
 僕はまた首を横に振った。
「そういうことさ」
 カメは懐こく笑った。僕は意味がわからず、首を傾げた。
「はっきり言って怖いよ、取り残されることは。君は僕よりも長い距離を走ってきたはずだ。僕はせいぜい、この近所を知っているだけ。でも、君はこの花の匂いもあの鳥の歌声も知らない。僕はただ楽しんでいたいだけなんだ」
「そういうの、なんだかすばらしいね」
 僕は少し悲しくなった。
「生きてるって気がするよ」
 そう言って、カメは飛び立つ青い鳥に手を振った。

 僕はどうして走るのだろう。どうして走り出してしまったのだろう。

「そろそろ行かなくていいのかい?」
 足音が迫っていた。
 別れを告げ、僕はまた走り出した。けれど、五メートルも進まないうちに、僕の足は止まってしまった。
 振り向くと、カメは不思議そうに僕を見ていた。
「もういいんだ。いいんだよ」
 僕はカメに微笑んだ。
「この辺を案内してくれないかな? 花のこととか鳥のこととか、他にもいろいろ教えてよ」
 カメは顔をしわくちゃにして笑った。
「じゃあ、一緒に月を見よう? 今夜は満月だ。なんでも君のご先祖さまはあそこにいたらしい」
「ご先祖さまもずっと走っていたのかな?」
「ずっと餅をついていたんだって」
 カメは真顔でそう言った。僕は堪えきれずに吹き出した。生まれて初めて、声をあげて笑った。
「なんだかすっきりした」とつぶやくと、カメは相変わらず笑いながら言った。
「それはね、たぶん、君がヒトになったからだよ」



あとがき

 いちおう、これが生まれて初めて書いた小説ってことになっている。正確には生まれて初めて書いた小説をもとに書き直したものかな。最初の小説は、ノートに手書きしたものだったのでもう残っていない。だから、ストーリーや台詞を思い出して書き直したものだ。おそらく本当に最初に書いた小説よりは多少こなれているはず。
 内容は子供向けのようでいて、たぶん大人向け。
 誰か絵の描ける人、この話を絵本にしてくれませんか?
 と思っていたりしないでもない(´・д・`)


 そういえば、報告が遅れたけれど、ランキングについて。結局、ブログ村一本に絞ることにしました。ささやかな仕掛けを施したので、なにかしら感じるところのあった記事がもしあれば、「ブログ村に㊞投票!」という画像をクリックしていただけるとうれしいです。


 うーん、ここ最近、文章がうまく書けない・・・。たぶん、いろんな意味で刺激が不足してるんだ(´・д・`)
コメントが4件ついています。   


コメント
始めまして。
私、サブタイトルを
“ウサギ年生まれのカメ”で、
独り言を書いてます。

いいお話ですね。
“走り続けることの意味”
そして、止まって周りを見回した時に、
“人生を楽しむこと”を知る。
ヒトになる。
これは確かに大人の童話ですね。

また読みに来るので、よろしく!
No.40 2008/02/26 22:15 | あんびりばぶ #- [ 編集 ]
あんびりばぶさん、訪問ありがとうございます♪
楽しんでばかりの人生じゃいけないけれど、楽しむ余裕をなくした人生というのもよくないと思うんですよね。

こういった話ばかりではありませんが、よかったらまた読みにきてください^^
No.41 2008/02/27 15:46 | うたう #ZzwRa1vs [ 編集 ]
そういう瞬間があったんだよね。
良い人であり続ける事は
周りの人に都合が良いという効果をもたらすけれど
自分自身の為にはなってないって気付いた瞬間が。
で いま表裏無く自然体で生きてます。
No.56 2008/03/02 00:43 | †片翅† #- [ 編集 ]
表裏なく自然体でいることって簡単なようでいて結構難しいことですよね。
ボクはいつも理性的に生きたいと思う自分と奔放に生きたいと思う自分の間に挟まれている感じです^^;
No.59 2008/03/03 16:18 | うたう #ZzwRa1vs [ 編集 ]

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